誠実な手作業に情熱を注ぐ、若き〈釜炊き職人〉の日々シャボン玉石けん 城戸玲乃

2025.01.28

誠実な手作業に情熱を注ぐ、若き〈釜炊き職人〉の日々
シャボン玉石けん 城戸玲乃

いまや100種類を超える「シャボン玉石けん」の商品群。それらはすべて北九州市若松区の自社工場で作られ、その現場では職人たちが精度の高い仕事に励んでいます。
2023年、その職人の輪に城戸玲乃(あきの)さんが仲間入りしました。創業以来初の女性職人。製造部門に新風を吹きこんだ若き職人に、成長と挑戦の日々を伺いました。​

「やりたいことができる」と思えた会社との出合い

就職先に「シャボン玉石けん」を選んだ理由は?

城戸
まず、昔から「胸を張れる仕事がしたい」との想いがありました。就活中、それが叶いそうな会社を探していて出合ったのが当社です。企業理念に強く共感しましたし、私の地元・北九州の企業だったのも魅力に感じました。工場見学に来た小学3年生のときは、まさか将来ここで働くとは思いもしませんでした。

自ら製造部門の配属を希望したのですか?

城戸
実は最初、無添加石けんの良さをアピールできるマーケティング部が第一希望でした。でも研修中に「ケン化部門」で〈釜炊き職人〉と呼ばれる先輩方の仕事ぶりを見て、興味を惹かれ、希望しました。商品製造の要となる大事な仕事ですし、無意識に私の中で“職人”への憧れもあったのかもしれません。最初は女性がいないので無理かなと思っていましたが、採用してもらえました。

現在の仕事内容を教えて下さい。

城戸
無添加商品を作るための11基の釜を、私を含めた4人の〈釜炊き職人〉で管理しています。原料となる天然油脂(牛脂・パーム油など)を釜に入れ、ニート(素地)の品質を均一に保ちながら1週間から10日間炊き続け、各商品のベースを仕上げていくのです。難しいのは、気温や湿度の影響を受けやすいニートの品質が変化してしまうこと。それを防ぐために攪拌を怠らず、色・音・香り・味・粘り気などを子細にチェックして、「いつもと違う」と感じたら塩分やアルカリなどを加減しバランスを微調整しています。

機械ではなく、人間にしかできない理由がそこですよね。作る側も繊細な勘所を求められるので“職人”と呼ばれるのでしょう。

城戸
はい、なにしろ「釜炊き10年」と言われるほど修練が要る仕事ですから。私も最初、ニートの状態の良し悪しがまるで分からず、先輩に教わりながらかすかな違いを感じる努力を重ねました。釜が変わるとニートの表情も変わるし、生き物と付き合っているようで情も湧きますよ。「頑張ってね」と声をかけてみたり(笑)。
少しは成長できたのか、助言を受けながらですが、最近2基の釜の管理を任されました。そのニートから出来た商品をスーパーで見かけると(※外装のロット番号で確認可能)声が出そうなくらい幸せですね。

温かい先輩が集まる職場環境も大きな支えに。

製造現場の雰囲気はいかがですか?

城戸
先輩方は40代・50代と年長ですが、とても話しやすく、率先して良い雰囲気を作ってくださるので和気藹々としています。ふだんは穏やかだけれど、現場では妥協を許さぬ先輩方のプロフェッショナリズムにも刺激を受けますね。
これは全社に共通することですが、本当に人柄が温かい社員さんばかりで、だから商品もこんなに優しいんだって納得できました。ストレスフリーな環境で働けることが、入社して一番良かったことかもしれません。

仕事上で苦労することは?

城戸
職場が工場なので危険な要素は多いです。例えば釜を攪拌中、保護具は装着していても高温のニートが飛び散るとやけどする恐れがあります。また力が必要な作業もあり、そういうときは先輩が「やらなくて良いよ」と言ってくださいますが、そこはちょっと悔しいですね。
また、大学までソフトボール部だったので体力に自信はありますが、さすがに夏の暑さはこたえます。五感を働かせる仕事なので、早寝早起きをするなど体調管理は欠かせません。

オフの日は何をしていますか?

城戸
インドアな仕事の反動で、休日はキャンプや登山などのアウトドアを楽しんでいます。先日は一人で無人島ツアーに参加しました。見知らぬ人と多く会うことで、もっとコミュ力を高めようと思って。自分では「人間的成長のための啓発活動」と呼んでいます。みんなにシャボン玉浴用を配ってきました。

最後に今後の目標を。

城戸
とにかく、もっとたくさん釜を炊いてスキルを上げたいですね。いま私は2種類の商品を担当していますが、先輩方は全商品を作る技術と知識を持っています。私のこともよく支えてくださるので、早くそのレベルに追いつき、先輩のサポートができる戦力になりたいです。

それに、当社の商品はこんなに職人が汗をかき、手作業で作っていることも伝えていきたい。それだけ情熱を注ぐ価値がある商品ですし、私たちも安全・安心を通じて社会に貢献できたら良いですね。
いま一番嬉しいのは、友人やお客様に「シャボン玉石けんの商品良いね」と言っていただけることで、それは私に社会人としての自信も与えてくれました。だからこそ、もっとお客様のために、会社のためにと頑張れます!