20億年前に生まれた魅惑の原料〈クロレラ〉で人々の幸せに貢献! ミクロの世界の神秘に挑む、国内屈指のパイオニア企業。クロレラ工業株式会社取締役・九州筑後工場工場長 田中賢太郎さん

2025.01.28

20億年前に生まれた魅惑の原料〈クロレラ〉で人々の幸せに貢献!
ミクロの世界の神秘に挑む、国内屈指のパイオニア企業。
クロレラ工業株式会社取締役・九州筑後工場工場長 田中賢太郎さん

無添加石けんの製造・販売を通じて、皆様の暮らしをよりよくすることを目指す「シャボン玉石けん」。このコーナーでは、私たちと共鳴する志を持ち、真摯なモノづくりに取り組む企業や人々をご紹介していきます。

今回ご登場いただくのは〈クロレラ〉製品の研究・開発を手掛ける「クロレラ工業株式会社(以下、クロレラ工業)」。クロレラは太古より存在する藻の一種で、ヒトに有益な栄養素を豊富に含むことで長年注目を集める天然素材です。同社は60年にわたりその可能性を研究し、健康食品や医薬部外品の製造・販売を続ける業界のパイオニア。その生産拠点である九州筑後工場を訪ね、クロレラの魅力や事業への想いを伺いました。

クロレラ工業株式会社
1964年、クロレラの将来性に着目した板波俊太郎氏により設立。愛知県豊田市にて生産を開始する。1971年、福岡県筑後市に新工場を構え、原材料の培養から最終包装まで一貫した国内生産体制を確立。現在は四代目社長・板波英一郎氏のもと、健康食品の枠を超えた製品開発を推し進めている。

“人類に健康と幸福を”を社是に掲げる御社には共感する部分が多く、以前から対談やコラ ボなどさせていただいています。今回は改めてお話を伺えるのを楽しみにしています。よろしくお願いします。まず、御社の製品の原料である〈クロレラ〉のことを教えていただけますか?

田中工場長
1890年に発見されたクロレラは、20億年以上前に誕生したと言われる単細胞緑藻、つまり藻の一種です。主に湖沼や河川に生息し、食物連鎖の起点であることから“生命の源”とも呼ばれます。1粒の直径は3~8マイクロメートルと微細ながら、ビタミン・ミネラル・葉緑素・不飽和脂肪酸・食物繊維など、ヒトの健康に不可欠な栄養素をバランス良く含有。栄養価は緑黄色野菜の10倍というデータも出ています。
そして1960年代、そのポテンシャルに早くから注目していたのが初代社長の板波俊太郎です。自身もクロレラによる健康への寄与を体験しており、「クロレラ製品を通して人々の役に立てたら」と私財を投げ打ち弊社を設立。ちょうど高度経済成長の最盛期で、暮らしが豊かになる一方、公害や成人病(生活習慣病)が社会問題になっていた頃でした。

御社は世界で初めてクロレラの製品化に成功された企業です。今ほど効能が解明されてない頃ですから、相当な覚悟で臨まれたと思いますが、その精神は「シャボン玉石けん」にも通じるものがあると感じます。理想的とも言える天然素材のクロレラを、御社ではどのように製造されるのですか?

田中工場長
簡単に説明しますと、まず屋内のフラスコでクロレラを培養し、品質の高い種母を育てます。それを屋外のプールに2週間ほど移し、専門スタッフの管理下で光合成をさせながら数をさらに増やします。筑後市は地下水が豊かで日照時間が長く、こうした培養や育成には最適な環境なんですよ。

やがてクロレラの細胞活性が最高の状態になったところで収穫し、遠心分離機にかけて水洗濃縮を行います。それをスプレードライヤーでサラサラに乾燥させれば、大半の製品のベースとなる粉末が完成。余計な添加物を一切加えないのも弊社のこだわりですね。工場の機材は年々進化していますが、エキスや粉末の基本的な製造プロセスは昔と変わりません。プール培養までの工程は、生き物を大事に育てる“農業”。遠心分離機から先の工程は“工業”という感覚で取り組んでいます。

身近な川や湖で素材が手に入るなら、クロレラ事業は参入しやすい分野に思えますが、実際は御社のような専門メーカーはほとんどありません。これはなぜでしょう。

田中工場長
実は、多くの企業がこぞって製品を出した“クロレラブーム”が’70年代にあったんです。各国政府がクロレラの研究開発を推奨したり、宇宙食への可能性が探られたりと、国内外で大きな盛り上がりが起きました。ところが、ある企業のずさんな製品がトラブルを起こしたのを機にブームは終了。なかなか利益が出にくいビジネスでもあり、その時ほとんどの企業が撤退しましたが、弊社は「安全でエビデンスが確立されたクロレラを作っている」との確信から事業継続を決めたのです。

その根拠の一つが、弊社だけが原料に用いる「チクゴ株」。クロレラにはおよそ20の種類があり、さらにその中に多様な特性を持つ「株」が存在します。初代社長は、そこから一番製品化に適した優秀な株を選んで「チクゴ株」と命名。培養に手間のかかる株ですが、もはやこれ抜きに弊社の目指す品質は実現できません。他の株より細胞壁が薄く、体内での消化率が高いのも大きな特長。まさに弊社の生命線と言えます。

それに加え、御社は以前から「チクゴ株」が有益・有用であることを発信し続けられています。学会等で報告された研究や論文は700以上と聞いて驚きました。でも人の口に入るものを扱う以上、これは大事なことですよね。

田中工場長
はい。健康食品がグレーな印象を持たれがちなジャンルである以上、私たちには常に安全性や有用性のエビデンスを出し続ける義務があると思うのです。そのために独自の研究開発部門を社内に設けましたし、そこから免疫細胞の活性化、デトックス、抗酸化作用など、さまざまなクロレラの働きを見つけることができました。

こうした勢いを受け、近年は製品開発がより活発になっています。弊社の主力は粒やドリンクタイプの健康補助食品ですが、すでに化粧品やレトルト食品などにもフィールドを拡大。今後も“健康食品企業”の枠を超えた展開を図るつもりです。

食品以外では、水産業や農業分野でもニーズが伸びています。養殖魚の餌となる動物プランクトン培養や、田畑の土壌改良にクロレラを使うと明らかに良い効果が出るんです。特に国内外の養殖関係者からの反響は大きいですね。食糧危機が叫ばれる昨今ですが、このような形で生産に役立てるのは喜ばしいこと。クロレラは環境に一切負荷をかけないので、SDGsの推進にも貢献できるのではないでしょうか。

先ほど九州筑後工場を拝見しましたが、人手をかけるべき所にはしっかりとかけ、製造ラインも健康補助食品GMP(※①)やFSSC 22000(※②)の認証を受けた安全性の高い施設でした。細部まで配慮された設計に「できることはすべてやる」という御社の誠意を感じます。責任ある製品を作るには、長年のノウハウに加え、ここまで徹底した努力が必要なのですね。

田中工場長
製品が胸を張れるものなので、社員たちも頑張れるのでしょう。そこも「シャボン玉石けん」さんとの共通点じゃないでしょうか。だから最初に言われたコラボレーションも、私には自然の成り行きに思えました。御社の森田社長が弊社製品を愛用いただいていたことも、コラボ実現を後押ししたと聞いています。

それ以前にも、同じイベントにブース出店するなどの接点があったんですよね。

田中工場長
私も御社の事業は存じており、ずっと親近感を持っていました。弊社の社是が「人類に健康と幸福を」、御社が「健康な体ときれいな水を守る」。きっと同じ理念をお持ちなのだろう、いつか一緒に何かできるといいな、と思っていたのであのコラボは嬉しかったですね。実際、期待以上のシナジー効果が得られたと満足しています。

両社の長所を掛け合わせた「みんなのせっけん」は、特に肌の悩みを持つ消費者様にご好評いただいています。このように、人々の生活や自然環境にポジティブな貢献ができるものを生み出していきたいですね。最後に、これからの目標を教えていただけますか?

田中工場長
まずは、より多くの方々にクロレラという“自然の恵み”を知っていただきたいです。そして、これまで以上にクロレラの研究を掘り下げること。まだまだ隠れた力がクロレラにはあると、私たちは考えています。既存の“何か”にクロレラを加えるだけで、まったく新しい輝きを帯びることもあるでしょう。そうした成果を出すために、さらなる技術向上に努めていきます。

そのために重要なのは、弊社の社長もよく口にする「不易流行」です。本質的なものは絶対変えず、同時に新しいものを取り込むことを恐れない。このポリシーを守りながら、広く社会に貢献していきたいですね。

知れば知るほど奥が深いクロレラの世界。おそらく世界最古の食品原料であろう点にもロマンや神秘を感じます。無添加、健康、環境への配慮など、企業理念にも共通点が多い「クロレラ工業」。同じ福岡の盟友として、今後も切磋琢磨していけたらと願っています。

※①健康補助食品GMP/健康補助食品の「適正な製造管理と品質管理」を定めた厚生労働省によるガイドライン。②FSSC 22000/食品安全マネジメントシステムに対する国際規格