
入社3年目で担当した大プロジェクトが自信とやりがいに。
基礎研究に基づく「無添加石けんの良さ・価値」を広めたい。
シャボン玉石けん 研究開発部・基盤研究課 吉田光希(みき)
技術の分野において世界一の石けんメーカーを目指すシャボン玉石けんにとって研究開発こそが中枢と考えています。日々研究を重ね、新しいことにも積極的にチャレンジしています。なかでも2021年の「未来の海を守る 島まるごと無添加石けん生活~生活排水の環境及び生物に対する影響に関する実証実験プロジェクト~」の実施は、生活排水が環境や生物へ及ぼす影響について、洗浄剤として「無添加石けん」を使う前後でどのような変化があるのかを調査し、大きな反響を呼びました。今回は、そのプロジェクトを担当した吉田光希さんに仕事の苦労とやりがい、そして将来の夢を語ってもらいました。
まずは、シャボン玉石けんに入社した理由を教えて下さい。
- 吉田
- 大学院では有機合成という分野の研究をしていました。その後就活の時期になり、第一志望に選んだのがシャボン玉石けん。理系の知識が活かせそうでしたし、北九州の実家にも近く、それに長年の私の希望が叶いそうだと感じたからです。元々私は敏感肌で、特に基礎化粧品選びには苦労するのですが、この会社なら同じ悩みを持つ方々に寄り添える「無添加基礎化粧品を作れるかもしれない」って。2019年に採用され、入社後はずっと研究開発部に在籍しています。

研究に特化した部署ですね。どんな仕事内容ですか?
- 吉田
- 研究開発部は「商品開発課」と私の所属する「基盤研究課」に分かれており、前者が商品の開発やリニューアルを手掛ける部門、後者が石けんそのものを研究する部門です。簡単にいうと、石けんの特長を学術的に研究する中で、新たな優位性・価値を見出すことで次の商品に繋げる……というのが私たち基盤研究課の役割です。
すぐに結果が出るタイプの仕事ではないため、何度も仮説を立てて実験したり、いろんな論文を読み込んだりと、日々みんなで粘り強くチャレンジしています。壁にぶつかるたびに試行錯誤の繰り返しですね。全員が常に複数のテーマを並行して抱えている状態です。黙々と作業していますが、元々“実験好き”な人の集まりですし、自分たちのやりたいことができているので、こう見えて楽しくやっているんですよ(笑)。研究開発部の11人中、女性が5名という環境も働きやすいですね。ちなみに今は、自ら提案した皮膚やカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量ゼロを目指す取り組み)などをキーワードとしたテーマに取り組んでいます。
研究する上で、無添加ならではの難しさは?
- 吉田
- そこは間違いなくありますね。例えば天然由来の原料だけで、どうやって商品の防腐力や安全性を担保するかなど難題は山積み。ただ当社にはそれをクリアできる技術があり、そこが他社にない強みだと思っています。また近年は、デジタルデータなどを活用して業務管理を行う「スマートファクトリー」化が進行中で、研究開発部でも少しずつ取り入れ始めており、業務環境がよりよくなることを期待しています。
産学官民プロジェクトへの参加がターニングポイントに
仕事にやりがいを感じるのはどんなときでしょう。
- 吉田
- 実は入社後数年間、それが全然分かりませんでした。研究内容は外部に明かせませんし、新商品開発のような華やかさもないですからね。けれど、2021年の産学官民での「未来の海を守る 島まるごと無添加石けん生活~生活排水の環境及び生物に対する影響に関する実証実験プロジェクト~」に参加したことが私のターニングポイントになりました。これは「無添加石けんが環境にやさしいこと」を実証するため、福岡県宗像市の地島(じのしま)で行ったフィールドワークで、全島民にご協力いただき、手洗いから入浴・洗髪、食器洗い、洗濯、掃除などに、合成洗剤を使わず当社の無添加石けんだけで暮らしてもらったところ、3カ月で生活排水の水質が劇的に改善したんです。持続可能社会実現に向けた貴重なデータが得られ、メディアなどでも大きな話題になりました。
その期間、私は関係各所との調整で大変でしたが、外部の先生方とのコラボは刺激的でしたし、合計1年に及ぶ島民の方との交流も楽しかったです。それに何より、島民の方から直接商品を褒めていただけたのが嬉しくて。私の仕事が直接消費者の眼に触れることはありませんが、あれ以来「私もシャボン玉石けんの社員として社会に貢献できているんだ」という自信やモチベーションを得ることができました。

研究室を飛び出すと視野も広がりますね。
- 吉田
- 地島でご縁ができた方々は、今でも何か新しいことを始めたい時や、共同研究をしたい時のパートナーになって下さいます。そうした窓口が増えたのは会社にも良いことだと思っています。それと2022年の「宗像国際環境会議」で、地元の中高生に向けて講演ができたのも良い思い出です。
無添加基礎化粧品を開発する夢にも近づいていますか?
- 吉田
- 現在はそこにつながる基礎研究を行っているところです。でもここ数年は、自分が開発するよりも、むしろこれまでの研究に基づく「石けんの良さや価値」を広めたいと思うようになりました。研究職として、“商品”よりも“技術”を形にしたいんですよね。
それに、今取り組んでいるテーマはどれもやりがいがあり、成果が出たらきっと社会に影響を与えられる商品に繫がる──そんな自信があります。今後はそこもより突き詰めたいですね。
最後に読者の方にメッセージをお願いします。
- 吉田
- 環境にやさしい商品を作っているためか、研究開発室はもちろん他部署の社員も穏やかで良い人ばかり。他者にもモノにもやさしくて、そういう仲間と働けることがすごく幸せです。品質の良さはもちろん、そんな“あたたかさ”も商品を通じてお伝えできるようになれたらと願っています。
