「香害」を扱ったウェブドラマが好評!見えない苦しみに、映像でエールを映像ディレクター 多賀公英さん

2026.07.30

「香害」を扱ったウェブドラマが好評!
見えない苦しみに、映像でエールを
映像ディレクター 多賀公英さん

2025年10月より、シャボン玉石けんの公式YouTube、Instagram、TikTokで「エール 香害を知ってください」というウェブショートドラマが公開されています。香害(※1)の認知拡大に取り組むシャボン玉石けんが若い世代に向けて制作した映像コンテンツで、高校のバスケ部を舞台にした物語には公開直後から予想を超える反響が寄せられました。今回のゲストは、その監督を務めた多賀公英さんです。

(※1)柔軟剤や化粧品などに含まれる人工的で過剰な香料で体調不良を引き起こす健康被害のことで、化学物質過敏症の原因の一つ。

賀 公英たが こうえい)さん
1990年、東京都出身。幼少から映画に親しみ、英語と映画制作を学ぶためアメリカに留学。帰国後はフリーランスの助監督として数々の作品に参加する。2019年に監督した、ウェブムービー「ティーンズ・エンパワメント・プロジェクト」がTCC新人賞を受賞。2024年、TVドラマ「離婚後夜」4・5・7話を監督。2025年、シャボン玉石けんの香害啓発ショートドラマ「エール 香害を知ってください」を監督。日本人男性初のインティマシーコーディネーター(※2)としても注目を集めている。

(※2)映像作品においてヌードや性的描写を伴うシーン(インティマシーシーン)で俳優の身体的・精神的安全を守り、監督の演出意図の実現を最大限サポートするスタッフ。

「エール」の制作ではたいへんお世話になりました。配信開始直後から多くの反響が寄せられたんですよ。

多賀さん
とても嬉しいです。僕も映像の力をあらためて実感できましたし、好意的なコメントが多くてモチベーションも上がりました。

「エール」は「香害」をテーマにしたドラマですが、「香害」については以前からご存知でしたか?

多賀さん
実は今回の仕事で初めて知りました。でも僕自身いくつかアレルギーを持っており、昔のルームメイトが人工的な香りに敏感だったことから、僕もずっと無添加の洗浄剤を使っています。だから監督の依頼があった時、「そういうテーマならぜひやらせてください!」とお願いしました。

「エール」の舞台はバスケットボール部で、主人公は「香害」に悩む高校生。身近な設定なので主人公の悩みがリアルに伝わります。撮影中に苦労されたことなどはありますか?

多賀さん
一番苦労したのは脚本ですね。今回は縦型のプラットフォームでの配信ということだったので、視聴者の方が観慣れている、1話3分×2話構成にすることが決まっていましたが、すでにできていた脚本が9ページあったんです。1ページで大体1分の映像になるから、これだと計9分。つまり3分ほどオーバーするので、伝えるべき内容を優先して改訂をさせていただきました。当初は多かった恋愛要素を減らし、制汗剤や柔軟剤に対する主人公の悩みにフォーカスするなど、啓発とドラマのバランスを取るのが難しかったです。撮影したシーンも編集の時点でいくつかカットして、前編・後編それぞれ3分におさめました。

テーマがセンシティブなうえに、9分から3分も減らして、かつ伝えたいことをしっかり伝えるって、とても大変な作業ですよね。

多賀さん
はい。でも結果的に、テーマがよりわかりやすくなったので良かったと思います。個人的には、今回のようなタテ型画面のドラマを撮るのは初めてだったので勉強になりましたね。
女性マネージャーという設定は決まっていたので、今でも女性マネージャーが部活で使うタオルなどを洗っても違和感ないのかなど、現代の部活シーンとしてリアルに見えるようにバスケ経験者から話を聞きました。
それと、撮影現場の体育館にクーラーがなかったのは大変でした。真夏だったので、全員汗だくで、制作スタッフがキャストやスタッフをうちわであおいだり、冷たい飲み物やタオルを配ったりしてくれて助かりました。

「香害」というテーマについては?

多賀さん
「香害」自体の深刻さはもちろんですが、普通に暮らす人々が被害者の存在に気づかずに、無意識に加害者になってしまう……という点はむずかしい問題だと感じました。加害者側には悪意がなく、「自分の好きな香りを選んでいるだけなのに」という意見もあると思います。あらためて、毎日使うものにちゃんとこだわって暮らすこと、誰かが苦しんでいることに気づいた時にどうするか考える思いやりの大切さに気づかされました。

「エール」をご覧の方からも同様の声をいただきました。シャボン玉石けんとしてもショートドラマ制作は初の試みですが、やって良かったと手応えを感じています。

多賀さん
Instagramなどを見ると、「香害」に困ってる人は本当に多いですよね。「あなたが敏感すぎるのが悪いんだよ」と言われたら、被害者側はそれ以上何も言えなくなってしまう。だからこそ「エール」を通じて「香害」を知り、周囲に配慮できる〈見えない思いやり〉を持ってもらえたら嬉しいです。
そうしたことに悩む人々を、いろんな無添加石けん(※3)でシャボン玉石けんさんは長い間、支えられてきたんだなと思いました。健康や環境を大事にするシャボン玉石けんさんと、消費者の〈見えない思いやり〉がどんどん繋がっていけばいいですね。

(※3) 酸化防止剤・着色料・香料・合成界面活性剤を使用していない石けんのこと。

「長編映画」という夢に向かって邁進中

多賀さんのキャリアについても教えてください。今の仕事を選んだのは、やっぱり映画好きだったからでしょうか?

多賀さん
はい。うちは両親が共働きで、幼い頃からジブリやディズニーなどを観て留守番していました。映画ファンの父が映画館にもよく連れて行ってくれて、DVDもたくさん持っていたので、僕も中学の頃にはすっかり映画にのめり込んでいました。子どもでもいろんなことが疑似体験できたり、遠い異国の文化に触れられたりする映画って面白いなあって。
そこから自然と「自分でも映像が作りたい」と思い始め、アメリカ留学を決めました。映画を通して英語に触れる機会も多かったので、現地で英語もしっかり学びたかったんです。10年前に帰国してからは日本で活動を始め、英語力を活かしてフリーランスの助監督をやりながら、映画や広告、ミュージックビデオなどの撮影現場に関わっていました。

助監督って、大声で指示を出したり走り回ったりとハードな仕事ですよね。見るからに温和そうな多賀さんがやっていたとは想像がつきません。

多賀さん
よく言われます。実際、プロデューサーに「もっと声を出して」「みんなを急がせて」と言われることもありました。でも、周りを急かしてもみんな焦っちゃうだけなので、プレッシャーを与えるよりも的確に指示を出す方が僕のスタイルかなと思います。監督としては、2023年から映像制作集団「分福」にも所属しています。

「分福」は日本を代表する映画監督の一人、是枝裕和さん(「誰も知らない」「万引き家族」等)が率いる会社ですね。どういう経緯で参加をされたんですか?

多賀さん
たまたま是枝監督が助手を募集されていて、それに応募したのがきっかけです。結果は不採用でしたが、そのとき「何か企画があったら持ってきて」と声をかけてくださって、それを機に所属することになりました。とはいえ正社員ではなく、メンバーは全員僕のようなフリーランスの集まりです。

そこではどんな活動をされていますか?

多賀さん
是枝さんは若手の映画人が映画を作れる環境を作ろうと考えている方です。実績の少ない若手にとって最大の難関は製作資金を集めることですが、どうすればそれが可能かをサポートしてくれます。メンバーそれぞれが撮りたい映画の企画を持ち寄り、毎月論評し合う企画会議もその一つです。原作のある作品やシリーズ作品など、成功例の多い企画が重視される映像業界で、オリジナル作品を作ることは簡単ではありませんが、僕も自分の企画を実現できるよう挑戦し続けています。

やさしく繊細な感覚をお持ちの多賀さんがどんな映画を撮るのか、ぜひ観てみたいです。

多賀さん
ありがとうございます。すでにTVドラマや短編映画などは監督してきたので、長編映画を撮りたいですね。自分の映画を映画館で観ていただけるようがんばります。将来的には日本だけではなく、海外との合作など、国を超えて映画制作をしていきたいです。

競争の激しい世界に身を置きながら、多賀さんはその厳しさを感じさせない涼やかな方でした。柔和な笑顔を終始絶やさず、まとう空気はピュアで真っ直ぐ。そんな人柄が、「エール」をやさしいドラマにしたのでしょう。いつか完成するであろう映画もすごく楽しみ。多賀さんの夢が実現するよう、私たちも大きな「エール」を送ります。

■ウェブショートドラマ「エール」の概要

作品名:『エール』香害を知ってください
配信プラットフォーム
前編:https://youtube.com/shorts/jsuJnFSrMkI
後編:https://youtube.com/shorts/4NVIGzrVV_A
話数・時間:全2話(各3分)
監督:多賀公英
出演者:佐々木寿音/玉置優允/西岡星汰 他

〈あらすじ〉
舞台は、高校バスケットボール部。マネージャーを務める葉山りこ(17)は、大事な大会を前にエースの南秀介(17)の調子がすぐれないことを心配していた。秀介は、不調の原因が分からないチームメイトと衝突することが増えていた。ある日、「最近強いにおいが苦手」という秀介の告白を聞いたりこは、インターネットで調べ、化学物質過敏症の存在を知る。自分が洗濯していたビブスやタオルの柔軟剤の香りが不調の原因だったことに気づき、顧問の先生に無香料の洗浄剤を使用することを相談し……。